白馬雪渓・白馬大池・栂池
【 日程 】 2023年8月10日〜13日
【 場所 】 白馬岳(2932m)〜小蓮華岳(2763m)〜乗鞍岳(2436m)〜栂池
【 天気 】 晴れ
【参加者】 Sn 他4名
【 行程 】
8/10(木) 新宿8:00(あずさ5号南小谷行き)=八王子8:33=白馬11:42
タクシー13:30=猿倉荘14:00(泊)
8/11(金・祝) 猿倉荘5:30-白馬尻6:50-葱平10:30—避難小屋12:25-頂上宿舎14:00(泊)
8/12(土) 頂上宿舎6:40-丸山7:00/7:15-白馬山荘7:50/8:30-松沢像8:45-白馬岳山頂
9:00/9:15-三国境10:15/10:30-小蓮華山11:30/11:45-船越の頭12:20/12:40
-白馬大池山荘13:45(泊)
8/13(日) 白馬大池山荘5:55-白馬乗鞍岳7:00-天狗原8:40/8:55-栂池自然園10:05-
ゴンドラ=タクシー11:00=白馬駅 白馬駅13:10 あずさ38号で帰京
10日 連日超酷暑が警告されるこの夏、沖縄直撃の台風6号と新たに関東への影響が心配される7号発生の狭間の快晴のこの日に山行日を迎えた。乗車待ちのプラットホームは合宿に向かう高校ワンゲル部員の生徒さん達の笑顔も並んでいた。夏本番の満席の中央線の下り。心がはやる。
白馬駅着、駅前の食堂で昼食。予約のタクシーで猿倉荘へ。車中、森林税あてても人材集まらず森の手入れがままならない話を聞く。宿到着後、雪渓方向、鑓温泉分岐辺りまで散策。雪渓から下山の数パーティーと出会う。疲労の様子も浮かんでいた。聞くと白馬岳の山頂はかなりの強風で、立ちすくむ程だったそう。あすを案じた。
夕食を終えて、あすに備えて、宿の玄関前にある登山相談所ブースへ、雪渓の様子を聞くべく皆で向かった。この時間、長野県警の山岳救助隊の方が在席していてくれた。この頃の雪渓は昨今の異常気象で更にゆるみ、雪渓の途中から雪渓を離れて右岸の斜面を進み、又雪渓に戻る、コースタイムは2h多くとる必要あり,との事を聞いた。あすの出発時間を早める判断はすぐついた。
三山縦走のコースの情報も仰いだ。すると次のような話が出た。
このコースは滑落などの事故多発。露岩帯の足場の悪い鎖場、ガレの急斜面、鑓温泉前後は突然道が切れ落ちる所ある、あるはずの雪渓も今年は消え、リスクが高い。北アルプス入門の白馬岳などとんでもない、剱岳相当の力必要、である、と。
さてどうするか、このコース経験者のメンバーの話を聞きつつ、皆で検討した。白馬岳初めてのメンバーは私を含めて二人。代替コースも新鮮である。選択は当然であるが、白馬大池コースになる。地図を広げて確認すべき事柄を把握しあった。宿、タクシーの予約関連はあすの日中に回す事として決着をみた。
11日 いざ雪渓へ。歩き易い道。沿道に咲くシシウド達の何と背の高い事か。青空をスックと突いて、目的の山頂の高みに思いがいざなわれるようだ。右には高山がいくつか見えている。道はやがて林道から細く急な登山道になり、“ようこそ”と書かれた大岩のある白馬尻へ着く。少し登って雪渓へ降りた。短い距離なのでヘルメットはかぶったが、アイゼンは履かず。のち右岸に移ってガレ場の秋道を、結構長く感じた80m程を登り、再び雪渓に降りた。今度はアイゼンをしっかり装着しベンガラの赤色に沿って登った。雪渓上部で左岸に移り、アイゼンを外し安堵して小休憩。ここで少し離れた場所に青い花を見つけた。ウルップソウだ。頂上辺りではとうに終わっているが、ここには残っているかも、と相談員さんが教えていてくれた。初めて出会う花、嬉しい。
その後急斜面のトラバース。暑く、また、足場への注意が続くが、さすがシロウマ、出てきたとりどりの花々に癒され疲れは感じない。昼食休憩を取り葱平辺りに進む。すると、その地名由来のシロウマアサツキを一輪発見。目を凝らすと遠くにやや旬を過ぎたもう一輪。見たかった花、減っているそうで、幸運だった。この辺りから眼下に小さく蟻のように大雪渓を登ってくる人達が見えた。
木陰のない日差しの強さの中を更に登る。やっと見つけた小灌木の下で小休止。ひたすら花と共に登って避難小屋に着いた。ここから先は更なる花々に囲まれての道となった。黄色、ピンク、白、紫、オレンジ。とりどりの花たちの競演。とりわけ緋赤のクルマユリと濃い紫のミヤマトリカブトは緑の中に点在する岩達と夢のような景色を生み出していた。
急登を終えて頂上宿舎着。たっぷり花々と楽しんでのいい時間での到着だ。宿舎からの景色を楽しみ、ワインで乾杯。幸せな時間を過ごし、夕食。バイキングでおいしかった。
12日 この朝、また別の長野県警の方と話す機会を得た。大町警察所の方6人程で槍ケ岳から白馬岳エリアを見守っておられるという。丸山の展望台で正面にそそり立つ剣岳はじめ鹿島槍ケ岳、立山、などの勇姿を眺め、イワヒバリ飛ぶ稜線を予定ルートだった杓子岳、鑓ケ岳を眺めながら白馬山荘へ。ここで展望レストランを覗き、コーヒーのひとときを楽しみ、山頂へ向かった。清々しい山頂。心配した強風もなく交代で写真タイム。ここで私は1つ心残り。新田次郎著の「強力伝」の方向指示版を良く見ずにきてしまったのだ。ゆとりが足りない自分を自覚した。
さあ、小蓮華岳へ。草丈の短くなった花々を過ぎて現れたコマクサが終わると小蓮華岳に続く迫力ある稜線が見えてきた。白や茶の岩礫とハイマツの緑のダイナミックな景観。空が近い。こうした景色の中へ今自分は入って行く。ずっととどまって味わっていたい衝動にかられた。
ほどなく三県にまたがる三国境。ここで私は、奥まったハイマツの陰に小さな慰霊碑がある事に気付いた。平成12年5月に遭難された九州の方。手を合わせた。この三国境では以前、装備の問題もなかったベテランの医師グループの方々がやはり5月の激しい天候急変で亡くなった事を思い出した。急に身が引き締まった。
岩屑の稜線をすすんで小蓮華岳へ。左右の景観の異なった稜線は、小蓮華岳を下り始めるとすぐ両サイドとも緑が多くなり、再び花達と出会う道となった。途中、石につまずいたか、倒れている母親らしき女性とうろたえている様子の家族がいた。皆さんが無事進めること願う事しかできなかった。
ほどなく船越の頭着。小休止。眼下に雲の間から白馬大池山荘の赤い屋根が垣間見れた。山荘はもうすぐだ。背の高いハイマツのトンネルくぐり、今度は背の低くなったハイマツの雷鳥平を超え、チングルマの茶色い果穂一面の原の中、カラフルに並ぶテントの向こうに佇む山荘に着いた。池の向こうの岩山上部に黒い熊が一匹見えた。夕食はカレー。
13日 いよいよ最終日、大池を回りこんで白馬乗鞍岳へ。岩を乗り越えて行く。平坦な山頂を超えて下山にかかる。酒樽程の大岩が積み重なって長く長く続く。注意はいるがおもしろい。以前麓の天狗原から眺めた7月中頃のこの斜面は大きな雪田で覆われていた。下山はどちらの状態が容易だろうか、と思った。やっと長い岩場を終え天狗原に下り着いた。進むと青紫の大きい実をつけたオオシラビソが目に入った。びっくりする程沢山ある。今年は当たり年だったそうであった。ササの根飛び出す登山道を下って栂池自然園入口に降り立ち、ゴンドラにて予約したタクシーに予約の定刻に乗り込み、つつがなく白馬駅へ到着した。初日に寄った同じ店に再び寄り、楽しく安全に終えられた今回の山行を祝い、予約のあずさで帰京した。
今回の山行で私は、
山行途中で計画を余儀なく変更せざるを得なくなった時、どう対処するかの経験を得た。学びが多かった。リーダーはじめ皆さんの的確で早い判断ですべてスムーズにいった。感謝であった。
また白馬岳は優しさと厳しさを合わせ持つ山である事をはっきり感じた。この要素は他の山でも心に留め置く事だと認識もした。
30種に近い花々に出会った。中でもクルマユリとミヤマトリカブトの鮮やかさは印象的であった。花々のみごとさ、高山のアルペン的眺望は白馬岳の周知の要素であるが、私も大いに魅せられた。
小蓮華岳への稜線歩きは夢に出てくるかもしれない。私の1つの夢が叶った山行であった。経験を積んだ皆さんのリードのおかげで充実の山行を終えられた。
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